応援を有難う


長かった、実に長かったというのが正直な気持ち。ずっと緊張の糸が緩むことはなかった。息子の問題なのに何で親がと言われそうだ。中学の父母会ではよく「子どもの人生だから」と切り離すような言い方をする親がいるが、そんなことは一度も考えたことがない。親子一体でこの目標に向って来た。もちろん立ち向かうのは息子なのだが、親も体調管理のサポートから、祈りのサポートまで、万全な環境を作り上げることに力を注いで来た。イエス様も含めたチームとして一丸となって戦って来た。

理解してくれる人は少ないかもしれない。分からない話で申し訳ない。息子が一生懸命になって乗り越えて勝ち取ったものはとても大きい。それを親子3人で喜んでいる。主に祈り、主に守られ、恵まれた瞬間だった。それは通過点に過ぎないのかもしれないが、大きな達成感と、乗り越えた後に見ることが出来る別世界があった。

8月21〜23日に全国中学校水泳競技大会がある。中学生スイマーが日本中から広島に集まってくる。去年は福岡であった。先輩にスーパーエースがいたので、フリーリレーとメドレーリレーの2種目で連れて行ってもらった。今年は最高学年、個人種目での出場も狙う。この大会のための参加標準タイムというのがあって、これを50mプールでの予選会で突破すると出られる。

今年度の初めに水着に関しての規則改定があった。3月のジュニアオリンピックまで着用可だったラバー素材のものは不可、丈も膝上でないといけない、というFINA(国際水泳連盟)の公式見解に従うことになって、折角の自己ベストタイムも水着を新たにして出しなおしということになった。

水着の効果ではなく、本人が頑張って出したタイムだと信じているが、なかなか新しい水着に慣れないのかタイムが戻らない。4.5月と随分苦労をした。照準はこの全中予選会に絞ってあるので良いのだが、それでも安心できる状態ではなかった。

7月後半はこの大会への予選会と、同じく8月に東京・辰巳であるジュニアオリンピックの予選会が続く。ジュニアオリンピックの参加標準タイムは3月末の同大会で切っているというのに、上記の理由からそれが認められない。この2つために春からずっと緊張していた。予選会へ向けてただ時がたつのを待つような日々。何も手につかないし、何もする気がしない。祈り続け、息子を信じると自分に言い聞かせてきたのだが、手放しで安心はできない。実はマサイはひと月くらい前から強い緊張状態にあった。何とか息子にこの緊張を悟られないように、うつさないように装ってきたが、細君も緊張しているのが分かる。ため息が多くなっている。大会前日の夜は眠れなかった。

全国中学校水泳競技大会への出場をかけた予選会は7月21.22日。今までどんなに速く泳いできても、この日に参加標準記録を突破しないとこの全国大会には出られない。息子が狙う400m自由形はタイム決勝の一発勝負。他県は予選、決勝と2回泳げるのに対し、神奈川県は400m以上の競技のみ1回で決めないといけない。いやがおうにも緊張は高まる。

大会の朝、会場に息子を送り届けてほっとする。風邪を引かせずに、怪我もさせずにこの場に送って来られた、親の大切な役目を全うできた、という安心感があった。しかしスタンドに座って見ていても落ち着かないし、緊張はひどくなるばかり。のどはからから、息苦しい。ずーん、と頭が痛くなってきた。

初日の200m自由形は緊張しすぎた。体が思うように動いていない。予選も決勝も本来の泳ぎができなかった。400mメドレーリレーは参加標準タイムを切ったものの、釈然としない。頭の中をいろいろな思いが駆け巡る。今後のこと、進学のこと、などなど。このレースの重要性を一番知っている息子は自分を追い込んでいる。空気は実に重い。

一発勝負は怖い。今までこの学年を引っ張ってきたエース達が参加標準タイムに届かない。泳ぎ終わった後、プールサイドで茫然としている。一人ひとりにとってはとても大切なレース。数々のドラマが目の前で展開されていく。

目を閉じて主に祈る。その回数が増えてくる。目を開けると、隣で細君が祈っている。進学先についての本を読んでいた時に、大学生になったら運動部は寮生活をするケースが多いというのを読んだ。あと3年もしたら離れて暮らすことになるのか、と真剣に悩む。全く子離れ出来ない親だ。可愛い息子を手放したくないマサイは、それで少し腰が引けていた。しかし祈りの中で今の頑張りが将来息子を手放すことにつながっても、それが主の御心であり、息子の為であるならば、ご計画通りになさってください、と祈る。

2日目。息子の出番までの時間がとても長い。酸欠なのか、貧血のような症状が出る。得意の400m自由形の本番。ものすごい集中力を持ってスタート台から力いっぱい飛び込んで行った。レースの4分強、スタンドで水泳部員の力強い応援を背中に聞きながら、ビデオカメラの画面を通して息子を追っていた。攻めて諦めない良い泳ぎだった。最後のターンをした時にはもう絶対に大丈夫だと確信できた。そのままゴール。力強くタッチをして、すぐに電光掲示板を振り向いた。そのタイムを見て握りこぶしを突き上げる。主よ、感謝します。

この日のためにティム・ヒューバー牧師が送ってくれた聖句は…

イザヤ書 40:28〜31
あなたは知らないのか。聞いていないのか。【主】は永遠の神、地の果てまで創造された方。疲れることなく、たゆむことなく、その英知は測り知れない。
疲れた者には力を与え、精力のない者には活気をつける。
若者も疲れ、たゆみ、若い男もつまずき倒れる。
しかし、【主】を待ち望む者は新しく力を得、鷲のように翼をかって上ることができる。走ってもたゆまず、歩いても疲れない。

標準記録を突破した時に実に良い笑顔を見せてくれた。本人が一番ほっとしたのだろう。息子はここで精神的にも大きなものを乗り越えた。自信もついたようだ。最後のフリーリレーも第一泳者として自信を持って泳いでいた。

個人種目1、リレー2種目での出場が決まって、息子はいろいろな人におめでとうと言ってもらえたと喜んでいた。皆に支えられ、守られ、勝てたということを実感しているという。息子には良い友達がたくさんいるようだ。

この日ばかりではなく、翌週のジュニアオリンピックカップ予選会でも、担当コーチばかりでなく、たくさんのコーチが泳いでいる間中応援してくれた。いろいろなところから声援がかかる。タイムが切れた後も皆が握手の手を差し伸べてくれた。きっと一番近くで手を振って力いっぱい応援してくれて、一番喜んでくれたのはイエス様だったに違いない。

応援してくれた皆に感謝。どんなにこの応援が嬉しかったことか。息子がたくさんの人に応援してもらっているのを見て涙が出てきた。長い長い緊張から解き放たれていく。こんなに緊張が長続きしてきたことは珍しい。髪の毛が真っ白になりそうだ。でも良かった。束の間のことかもしれないが、幸せを満喫している。これでゆっくり眠れる、と思っていたらその夜は興奮の余りまた眠れなかった。

新改訳改訂第3版 詩篇103:1〜5
わがたましいよ。【主】をほめたたえよ。私のうちにあるすべてのものよ。聖なる御名をほめたたえよ。
わがたましいよ。【主】をほめたたえよ。主の良くしてくださったことを何一つ忘れるな。
主は、あなたのすべての咎を赦し、あなたのすべての病をいやし、
あなたのいのちを穴から贖い、あなたに、恵みとあわれみとの冠をかぶらせ、
あなたの一生を良いもので満たされる。あなたの若さは、鷲のように、新しくなる。

月刊マサイで引用している聖書本文は、新改訳聖書第三版(©新日本聖書刊行会)を使用しています。

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